どうも、ミズキです。

今回は『サブリミナル・インパクト』という本の書評価レビューになります。

サブリミナル・インパクト
―情動と潜在認知の現代

作者:下條 信輔

新書:P314

出版社:筑摩書房 (2008/12/1)

■目次

サブリミナル・インパクト ―情動と潜在認知の現代

サブリミナル・インパクト(下條信輔)書評価レビュー

『サブリミナル・インパクト』の詳しい内容

序章 心が先か身体が先か―情動と潜在認知

第1章 「快」はどこから来るのか

第2章 刺激の過剰

第3章 消費者は自由か

第4章 情動の政治

第5章 創造性と「暗黙知の海」

『サブリミナル・インパクト』まとめ

悪用厳禁!サブリミナル・インパクト(下條信輔)書評価レビュー

本書「サブリミナル・インパクト」は、
先日レビューした「サブリミナル・マインド」の続編、
応用編的ポジションの書籍に当たります。

(作者もそう公言しています。)

 

とはいえ、その全体的な内容としては、
前著「サブリミナル・マインド」をもっと具体的でマイルドに、
もっと日常的でライトな題材を扱っているので、
前著ほどの重い抵抗感は感じにくくなっているはずです。

(文系の私にとって理系ちっくな実験系の話が少ないのは非常に有難い 笑)

 

なので、個人的には

 

「サブリミナル・インパクト」→「サブリミナル・マインド」

 

逆にこの順番で読んでいった方が、
より抵抗なく理解していけると思いました。

(最初からそう読めば良かった〜泣)

 

それでは、各章ごとに解説していきたいと思います。

『サブリミナル・インパクト』の詳しい内容

[目次]

序章 心が先か身体が先か―情動と潜在認知

第1章 「快」はどこから来るのか

第2章 刺激の過剰

第3章 消費者は自由か

第4章 情動の政治

第5章 創造性と「暗黙知の海」

序章 心が先か身体が先か―情動と潜在認知

序章では本書「サブリミナル・インパクト」の主要テーマ、

 

「情動」

「潜在認知」

 

これら2キーワードの理解を鮮明にすべく、
日常的な事例から科学的な研究例までが様々に取り上げられています。

 

・体が裏切る、習うより慣れろ

・社会的に促進される後天的な優位反応

・感覚刺激に対して自動で反応する「定位反応」

・悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい

・好みよりも視線が先立つ「視線カスケード現象」

 

こんな感じですが、
やっぱりこの章で一番重要なのは、
最後の「視線カスケード現象」だと思います。

(唯一、「サブリミナル・マインド」で紹介されていない箇所でもありますからね。)

 

以下、その「視線カスケード現象」の要点部分の引用です。

まず第1に、体の定位反応が意識的な好みの判断に先立つ事。

先立つと言うより、むしろ不可欠である事。

 

第2に、この前駆過程は身体的であると同時に
潜在的=無意識的、無自覚的である事

 

第3に「選び好む」という主観的、感情的判断だけに特異的であり、
他の客観的判断ではあまり見られない事。

 

第4に「体の反応が感情経験に先立つ」という、
ジェームズ・ランゲ説の伝統に沿うものである事

 

第5に、他人(の顔)に対してもモノに対しても同様に見られるが、
定位反応というモノへの適応機構を基盤にして、
社会行動のために進化したと見られる事。

 

そして第6、それ故に、自己と他者や社会を潜在的な地底でつなげる、
コミュニケーションの機能を担っている事。

(P43)

こんな感じで6つにまとめられるわけですが、
要するに、この章で作者が最も言いたいのは、

 

人間は無意識的な情動や潜在認知の影響を強く受けているため、
今後、その理解が私達の生きる現代社会の理解にも繋がり得る

 

という事だと思います。

 

そこで、その理解を深めていくために、
音楽や広告、政治といった観点から、
「情動」「潜在認知」の働きを見ていこうというわけです。

第1章 「快」はどこから来るのか

第1章では、先2つのキーワードについてを、
「音楽」にフォーカスした形で解説していく内容になっています。

 

おそらく、誰にでも1つや2つは好きな「音楽」というものがあるのではないでしょうか?

(私で言えば、B’zとかLed Zeppelinなどのハードロック系、あとはEDMとかクラシックも意外と好きです。)

 

本章は、そんな誰にでも身近な存在であろう「音楽」についてを

 

・そもそも音楽は何のためにあるのか

・なぜ音楽は私達の情動を揺さぶるのか

・どのようにして音楽は進化発展してきたのか

 

このような観点から捉えていく事で、
人間が感じる「快」の根源を明らかにしていこうというわけです。

 

そこで、早速その答えとなる箇所を抜粋してみると・・・

「音楽」は何のためにあるのか、
その進化的起源はどこにあるのか、
そういう探索から始まって、
「言語」との類縁性を見出し、
しかし同時に違いにも気付きました。

 

つまり、言語の進化の裏街道
情動コミュニケーションに特化した道筋で、
音楽は生物学的、神経生理学的な必然として発生したのではないか、と。

言うまでもなく社会集団の増大と複雑化が、
その後の音楽の進化に拍車をかけたと考えられます。

神経系の活性化、特に社会脳、情動脳の活動が重要なのではないか。

 

このような生物学的前提のもとで、
改めて音楽のもたらす神経学的「報酬」を考えるとき、
従来の神経生理実験は役に立たない事に気づきます。

感覚する事それ自体に内在する快を問題にしなければならないのです。

 

そして、感覚する事それ自体に内在する快を考える上では、
経験と記憶の効果の効果がカギとなります。

音楽に特有に見られる反復と変化のパターンが参考になりました。

 

そこから、話は親近性と新奇性の原理に及びました。

この両者が必ずしも矛盾するわけではなく、
互いに補う形で一つの機能システムを形成している事を理解されたと思います。

(P93~P94)

どうやら「音楽」というものは「言語」と深い関係があるらしく、
そこから社会的、感情的な方向に分岐して進化していったと。

 

そして、

 

「親近性(反復、馴染み深さ、日常性)」

「新奇性(変化、目新しさ、非日常性)」

 

上記の無意識的な2要素が相互にバランス良く絡み合って、
「音楽」を行う事、聞く事自体が「快(報酬)」になってきたという事ですね。

 

確かに、ある音楽が大ヒットした時って、
少なからずは今までの型や潮流を保ちつつも、
明らかに今までの音楽とは一線を画す強力なインパクトがあったような気がします。

(B’zで言えば、LOVE PHANTOMとかかな。)

 

まぁ、何もこれは音楽だけでなく、
映画とか小説、漫画でも通用する話なので、
この2要素が存分に発揮されているものを探してみるのはいかがでしょうか?

(その具体的な活用事例は以下の記事でも解説しています。)

>面白い&有益なWEBコンテンツでバズらせる方法はクシ(櫛)にあり!

第2章 刺激の過剰

第2章では現代社会の感覚刺激がどんどん増加していて、
常に私達はその過剰な刺激に晒され続けているという話です。

 

その具体的な過剰刺激の種類としては、

 

  1. 感覚刺激の絶対量、総エネルギーの過剰
  2. 変化や動きの過剰
  3. 速度の過剰と上限の突破
  4. 情報量の過剰
  5. 多元化、同時並行チャンネルの過剰
  6. 選択肢の過剰

 

現代ではこれらの刺激があまりにも多すぎるという話なのですが、
まぁこれは普段の実生活を振り返ってみればある程度は実感できるかと。

 

ggrks(ググレカス)という言葉があるように、
今では分からない事があればGoogle先生ですぐに解決できますし、

 

TwitterやFacebook、YouTubeなんかのSNSなんかでも、
日々絶えず膨大なゴミ情報が放出され続けています。

 

その過剰なまでの情報量によって、
私達はエネルギーを奪われ続けているのです。

 

ただ、これは意外に思ったのですが、

 

どうやら私達はその過剰刺激に慣れるどころか、
もっともっとと刺激を欲するようにもなるんだとか。

 

故に「過剰は不足」であると・・・。

 

なので、今後は、

 

・いかに断つか

・いかに捨てるか

・いかに離れるか

 

といった「断捨離」が重要になってくるんじゃないでしょうか?

 

社会自体はその逆方向に加速していきますから、
尚更、この断捨離の意識を徹底して、
過剰刺激をシャットダウンしていく必要があると思います。

第3章 消費者は自由か

第3章では、我々が何かモノを買う際の購買活動、
特にCM(コマーシャル)に的を絞った内容になっています。

 

「なぜCMは一定の効果を発揮するのか?」

 

この一点を明らかにする内容でしたが、
簡潔にその答えとなる箇所を抜粋しておくと、

CMは記憶に作用し、
記憶が選択に及ぼす力に訴える。

 

ここで大事なのは、
その効果の全てではないにしても、
相当部分が潜在的であるという事です。

 

ただそれが自分の選択、
購買行動に影響を与えているという因果関係に気づかない。

あるいはそれを積極的に否定するという意味で、潜在的なのです。

(P169〜P170)

つまり、CMは何回も何回も私達の目に入る事で、
徐々に私達の無意識へと浸透していき、
気づかぬうちにそのCMの商品が気になってしまう、購入してしまうという事ですね。

(しかも、その購入の正確な理由が明確に答えられないとは怖いものです・・・)

 

私自身、テレビ自体をあまり見ないので、
必然的にCMもあまり目にしなかったのですが、

 

最近ではYouTubeでも頻繁に広告が流れるようになったので、
やはりCMの呪縛から完全に逃れる事はできないようです 笑

 

ちなみに、私がナンバーワンだと思うCMはコレです。

(ちと長いですがw)

 

 

このCMって仕掛ける側の視点から見ると、
ホント目から鱗的な要素が盛り沢山なんです。

 

・万人にウケやすいストーリー構成

・下手な押し売り感ゼロ

・最後まで何のCMなのか一切明らかにしない

 

まだまだあるのですが、
とにかくこのCMからは多くの事が学べるはずです。

 

それこそ、あなたの潜在意識に染み込んで、
知らぬ間にこの商品が目に付いてしまうかもしれませんけど 笑

 

あと、THE・サブリミナル的なCMと言えばコレですね。

 

 

「全部出たと?」という卑猥な誤解を招くセリフのために、
すぐにクレームが殺到して放映中止、差し替えられたこのCMですが、

 

こうやって生理的な欲求を絡めて、
男性陣の購買意欲を煽ってくるのですから
ホント困ったものです・・・。

第4章 情動の政治

第4章では「政治」に焦点を絞った内容を展開しています。

一度植え付けられた記憶は潜在レベルで情動的な反応の引き金を引き、
その効果は取り消されても消えない。

 

それ故こうした世論操作は、
もともとの市民感情が論理的、分析的な根拠に基づくというよりは、
情動的、感情的な場合に有効なようです。

それも取り立てて訊ねられない限り意識に昇らないような、
潜在的なレベルに働きかけた時に。

 

潜在認知レベルでの操作は、
自覚がなく自働的にトリガーされる分、抵抗し難いのです。

(P218~219)

自らの意思で投票しているつもりでも、
実は無意識のうちに私達は票を入れさせられていると・・・。

 

まぁ私自身、まだ政治には疎い若造なので、
選挙とか政策にはあまり興味はないというか、
分からない事だらけなのですが、

 

こういう政治的情弱がどんどん狙われていくと考えると何だか恐ろしいですね・・・。

しかも、それが無意識的な洗脳というのですから尚更です。

 

例えば、以下2つの画像。

 

(細菌兵器のゲリラ活動と安倍総理のビラをチラリと絡めている)

(わいせつ事件のテロップと安倍総理のゲスっぽい笑顔)

 

上記2つの画像はいずれも安倍総理に被せたサブリミナル効果とされていますが、
こんな風にメディアは私達の無意識に「アンチ安倍」の考えを刷り込んでくるのです。

(あ、決して私は左翼とかではありませんよ 笑)

 

もはや、公平な選挙や政策が難しくなっている現代では、
政治についての知識を深める以上に、
無意識や潜在的な認知といった心理学も学んでいく必要があるのではないでしょうか。

第5章 創造性と「暗黙知の海」

最終章となる第5章では、
「クリエイティビティ、オリジナリティ=創造性、独創性」について解説されています。

 

いわゆる天才(アインシュタインとかモーツァルトなど)はいかにして誕生するのかといった話ですが、
作者の言わんとする要点をまとめてみると・・・

(クリエイティビティな人、独創的な才能とは)
さしあたり「全体的な状況を把握し、顕在知(顕在認知過程)と暗黙知(潜在的認知過程)」
との間を自由に往還しつつ、考え続けられる人(能力)」と答えてみることはできそうです。

(P282)

 

ひと言でまとめればこういう事です。

遺伝子や環境、教育などの相互作用で本人の辿ってきた来歴と、
その時代の社会と学問の文脈/状況。

それらが奇跡的に、非線形的に(=予測し難い形で)スパークした時に初めて、
独創的な洞察が生じるのだから。

そのどれか一つが微妙に変わっただけで、
スパークはもう生じないはずだから。

(P288)

天才の天才性は彼(女)の頭の中に孤立して存在しているわけではないのです。

(P290)

 

見方を変えれば独創性を巡る考察を次のようにまとめる事ができます。

一見ランダム・ウォークに見えることが、実はランダムではなかった。

特に意識の潜在領域、暗黙知を考えるなら、と。

(P294)

要するに、天才というものは、
無意識の圧倒的な力と社会的な外部環境、ランダム性との間で生まれるという事ですね。

 

ちなみに、作者はクリエイティビティ溢れた独創的な天才になるための術として、

 

  • 全体の状況をよく分析し、しっかりと把握してから忘れる
    (顕在知から潜在知に貯蔵する)
  • 複数の異なる問題、異なる分野について多く触れる
  • 本能(潜在認知や情動)の赴くままに遊んでみる
  • たまには報酬系に直結する過激な刺激(音楽、スポーツ、グルメ、セックス)を与える
  • 自分の心の潜在的な部分からの微妙な信号、ささやきに注意を向ける
  • なぜか気になる事や夢でみた事をメモとして書き留める
  • 自分の言い間違えや記憶違い、混同、行為のなまりに注目してみる

 

このような方法を紹介しています。

(作者自身の謙虚な性格から、あまり強くは推奨していませんでしたが・・・)

 

いずれにせよ、これらは

 

「全体を俯瞰した上での顕在知と潜在知の自由な往還」

 

という天才の特徴を踏まえたものなので、
その背景をしっかりと理解しつつ、
今後、未来のアインシュタインになれるよう日々実践していきましょう!笑

『サブリミナル・インパクト』まとめ

以上、各章ごとに本書『サブリミナル・インパクト』を見てきましたが、
その全体的な内容としては、

 

「情動」

「潜在認知」

 

この2キーワードを元に、

 

・音楽

・情報

・市場

・政治

 

といった私達の生活に密接に関わってくる分野を詳しく解明してきました。

 

音楽においては、快はどこから来るのかといった問題についてを。

情報においては、現代における異常なまでの過剰刺激についてを。

市場においては、CMや広告による巧妙な選択肢の制御についてを。

政治においては、無意識の情動に訴えかける大衆誘導についてを。

 

そして、これらで学んだ知識を総動員して、
クリエイティビティや天才性といった特異なテーマに迫っていきました。

 

おそらく、どの分野にも無意識的な要素が大きく影響している事が分かって頂けたのではないでしょうか。

 

それと同時に、より私達の潜在的な無意識の仕組みを理解&活用していく必要にも迫られたはずです。

(それを悪用しようとする連中から身を守っていく必要もありますが・・・)

 

まぁ無意識とか潜在意識系の学問チックな知識は、
本書『サブリミナル・インパクト』と、
前著『サブリミナル・ブレイン』の2冊で十分だと思いますので、
是非、そちらの方もお読み頂ければと思います。

 

それでは、ありがとうございました!

ミズキ

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